「キャリアアップのためにIT資格を取りたいけど、ITパスポートと基本情報技術者って何が違うの?」
「転職を考えているんだけど、どっちの資格が有利になるんだろう?」
IT化が進む現代、このような悩みを抱えている方は少なくないでしょう。しかし、自分に合わない資格を選んでしまうと、学習に費やした時間や労力がキャリアにうまく結びつかない可能性も。
この記事では、ITパスポートと基本情報技術者の違いを難易度からキャリアでの評価まで徹底比較し、あなたが「本当に取るべき資格」を明らかにします。最適な資格を選び、キャリアアップへの確実な一歩を踏み出しましょう。
ITパスポートと基本情報技術者、キャリアアップを目指すならどちらを選ぶべき?

気になるITパスポートと基本情報技術者試験の違いを7つの視点から徹底的に比較し、あなたがどちらの資格を目指すべきか、明確な答えを見つけるお手伝いをします。ぜひ最後まで読んで、あなたのキャリア戦略に最適な一歩を踏み出してください。
まずは結論!ITの基礎知識ならITパスポート、エンジニアを目指すなら基本情報技術者
本題に入る前に、この記事の結論からお伝えします。どちらの資格を選ぶべきか、あなたの現在の状況や将来の目標によって最適な選択は異なります。
- ITパスポートがおすすめな人
- ITの専門家ではないが、仕事でITの基礎知識が必要な方(営業、企画、事務など全職種)
- これからIT業界を目指す上で、まずITの全体像を掴みたいと考えている未経験者
- 就職活動を控えており、ITリテラシーの高さをアピールしたい学生の方
- 基本情報技術者試験がおすすめな人
- プログラマーやシステムエンジニア(SE)としてIT業界に就職・転職したい方
- すでにIT業界で働いており、自身のスキルを客観的に証明し、キャリアアップしたい方
- 将来的に応用情報技術者試験などの、より高度なIT資格の取得を目指している方
簡単に言えば、ITパスポートは「IT社会の共通言語」を学ぶための資格、基本情報技術者は「ITエンジニアとしての専門的な第一歩」を踏み出すための資格と位置づけられます。
まずはこの大きな方向性を理解した上で、さらに詳しい違いを見ていきましょう。
そもそもITパスポート・基本情報技術者とは?国家資格としての位置づけ
まず知っておきたいのは、どちらも経済産業省が認定する「情報処理技術者試験」という国家資格の一区分であるという点です。これは、ITに関する知識や技能が一定の水準以上であることを国が証明する、信頼性の高い資格制度です。
情報処理推進機構(IPA)が定める「ITスキル標準(ITSS)」では、ITパスポートはレベル1、基本情報技術者はレベル2に位置づけられています。
- ITパスポート試験(IP):スキルレベル1
- 対象:すべての社会人、これから社会人となる学生
- 目的:ITを利活用する上で必要となる基礎的な知識を証明する。
- 内容:情報セキュリティや企業コンプライアンスなど、ITの安全な利用に関する知識も含まれる。
- 基本情報技術者試験(FE):スキルレベル2
- 対象:ITエンジニアを目指す人、ITエンジニアとしての基礎知識を習得したい人
- 目的:ITエンジニアとしてキャリアをスタートするための登竜門。情報技術全般に関する基本的な知識・技能を体系的に証明する。
- 内容:プログラミングやアルゴリズム、コンピュータシステムなど、より技術的な内容が深く問われる。
このように、国が定めるスキルレベルからも、ITパスポートが基礎、基本情報技術者がその応用・専門的な入り口であることがわかります。
受験対象者の違いは?IT業界未経験者とエンジニア志望者、それぞれへの推奨度
両資格の推奨度を、具体的な人物像に合わせて見てみましょう。
【ITパスポートがおすすめ】
- Aさん(28歳・営業職)
- 悩み:最近、顧客への提案でITシステムやDX(デジタルトランスフォーメーション)の話が増えてきた。エンジニアとの会話についていけず、もっとスムーズに連携したい。
- 推奨理由:ITパスポートの学習を通じて、ITの基本的な用語や仕組み、企業活動との関連性を学べます。これにより、ITを利活用する側としての知識が身につき、自信を持って商談や社内会議に臨めるようになります。
- Bさん(21歳・文系大学生)
- 悩み:就職活動を控えているが、特にアピールできるスキルがない。どの業界に進むにしても、ITの知識は必須だと感じている。
- 推奨理由:ITパスポートは、ITリテラシーの高さを客観的に証明できるため、エントリーシートや面接で有効なアピール材料になります。業界を問わず、ITを正しく理解し活用できる人材として評価されやすくなります。
【基本情報技術者試験がおすすめ】
- Cさん(25歳・IT業界未経験)
- 目標:未経験からプログラマーへの転職を本気で目指している。学習意欲とポテンシャルを企業に示したい。
- 推奨理由:基本情報技術者試験は、ITエンジニアとしての基礎が固まっていることの強力な証明となります。特に未経験からの転職では、この資格を持っていることで「体系的な知識を自ら学ぶ力がある」と評価され、選考で有利に働くケースが多くあります。
- Dさん(30歳・システム開発会社勤務)
- 悩み:現在の会社で3年間プログラマーとして働いているが、自己流で知識を身につけてきたため、基礎に不安がある。体系的な知識を学び直し、次のステップに進みたい。
- 推奨理由:日々の業務で断片的に得た知識を、基本情報技術者の学習を通じて体系的に整理できます。設計から開発、運用までの幅広い知識を再確認することで、より視野の広いエンジニアへと成長でき、昇進やより上流の工程への挑戦にも繋がります。
このように、あなたの現在の立場と目指すゴールによって、選ぶべき資格は明確に分かれます。
【7つの視点で徹底比較】ITパスポートと基本情報技術者の違いは?
ここからは、より具体的に2つの試験の違いを7つの視点から掘り下げていきます。この比較を通じて、あなたにとってどちらの試験が現実的な選択肢なのか、より鮮明になるはずです。
違い①:難易度と合格率|必要な勉強時間の目安も解説
資格取得を考える上で、最も気になるのが難易度でしょう。IPAが公表している統計データと、一般的に言われる勉強時間を見てみましょう。
比較項目 | ITパスポート | 基本情報技術者 |
IPAスキルレベル | レベル1 | レベル2 |
合格率 | 約50% | 約40~50% ※2023年度以降の新制度 |
勉強時間(目安) | IT初学者:約100~180時間 | IT初学者:約200時間(プログラミング経験者は短縮) |
※合格率は時期によって変動します。最新の情報はIPA公式サイトをご確認ください。
意外に思われるかもしれませんが、近年の合格率だけを見ると両者に大きな差はありません。基本情報技術者試験は2023年度から試験制度が変更され、合格率が以前の20%台から大幅に上昇しました。
しかし、これは試験が簡単になったわけではありません。合格率の数字だけで難易度を判断するのは早計です。注目すべきは勉強時間と出題内容の専門性です。
ITパスポートは、ITに関する予備知識が全くない方でも、100時間程度の学習で合格を目指せます。一方、基本情報技術者は、特にプログラミングの知識が問われるため、未経験者の場合は200時間以上の学習が必要になることが一般的です。
結論として、合格に必要な専門知識の深さと学習量を考慮すると、基本情報技術者の方がITパスポートよりも難易度は高いと言えます。
違い②:出題範囲|内容の重複とそれぞれの特徴
試験で問われる出題範囲は、両者の目的の違いを最もよく表しています。出題分野は大きく「ストラテジ系」「マネジメント系」「テクノロジ系」の3つに分かれています。
- ストラテジ系(経営全般)
- 企業活動、法務、経営戦略など。
- ITパスポート:出題割合が高い(約35%)。企業の視点からITをどう活用するか、という問題が多い。
- 基本情報技術者:出題範囲には含まれるが、ITパスポートほど比重は高くない。
- マネジメント系(IT管理)
- 開発技術、プロジェクトマネジメント、サービスマネジメントなど。
- 両試験で重複する部分が多いが、問われる深さが異なる。
- 基本情報技術者:より実践的な開発手法や管理手法について問われる。
- テクノロジ系(IT技術)
- コンピュータシステム、ネットワーク、セキュリティ、データベースなど。
- ITパスポート:用語の理解など、基礎的な知識が中心。
- 基本情報技術者:出題割合が最も高い(約60%)。計算問題や、アルゴリズムとプログラミングに関する深い理解が求められる点が最大の違い。この分野が、多くの初学者にとっての壁となります。
要約すると、ITパスポートは「IT×経営」の視点が強く、基本情報技術者は「IT技術そのもの」の比重が圧倒的に高い、と覚えておきましょう。
違い③:試験制度|CBT方式は同じでも試験時間は異なる
試験制度にも違いがあります。
比較項目 | ITパスポート | 基本情報技術者 |
試験方式 | CBT方式 | CBT方式 |
試験日 | 随時(会場による) | 随時 |
試験時間 | 120分 | 科目A:90分、科目B:100分 |
出題形式 | 四肢択一 | 科目A:四肢択一、科目B:多肢選択 |
※CBT方式:Computer Based Testingの略。テストセンターのコンピュータを使って受験する方式。
両試験ともCBT方式で、自分の都合の良いタイミングで受験できる点は共通しています。
大きな違いは、基本情報技術者が科目A(知識を問う)と科目B(技能を問う)に分かれている点です。特に科目Bでは、アルゴリズムやプログラミング、情報セキュリティに関する実践的な問題が出題され、単なる暗記だけでは対応できない思考力が求められます。
違い④:基本情報技術者の午前試験が免除される制度とは?
基本情報技術者試験には、科目A試験(旧:午前試験)が免除される制度が存在します。これは、IPAが認定した特定の予備校や専門学校の講座を受講し、修了試験に合格することで適用されるものです。
この制度を利用すると、本番の試験では科目Bに集中できるため、合格の可能性を高めることができます。
一方で、ITパスポートにはこのような免除制度はありません。この点も、専門的な学習を前提とする基本情報技術者試験の特徴と言えるでしょう。
違い⑤:キャリアや転職での評価|どちらが有利?
資格取得の大きな目的であるキャリアへの影響についても見ていきましょう。
- ITパスポートの評価
- 幅広い職種でITリテラシーの証明に:IT業界に限らず、あらゆる業界で「ITの基本を理解している人材」として評価されます。DXを推進する企業では、全社員に取得を推奨しているケースもあります。
- 転職での効果:IT業界未経験者が転職活動をする際、「ITへの関心と学習意欲」を示すアピール材料になります。ただし、これだけでエンジニア職の内定を得るのは難しいでしょう。
- 基本情報技術者の評価
- ITエンジニアとしてのパスポート:その名の通り、ITエンジニアとしての基礎スキルを持っていることの強力な証明書となります。多くのIT企業で新入社員研修の一環として取得が推奨されており、取得者には資格手当を支給する企業も少なくありません。
- 転職での効果:未経験からITエンジニアを目指す場合、持っていると書類選考の通過率が大きく変わると言われています。実務経験者にとっても、体系的な知識の証明となり、キャリアアップ転職において有利に働きます。
結論として、ITエンジニアとしての就職・転職を考えるならば、基本情報技術者の方が圧倒的に有利です。
違い⑥:受験料と受験申込方法
受験にかかる費用も確認しておきましょう。
- 受験料(税込)
- ITパスポート:7,500円
- 基本情報技術者:7,500円
(2024年4月時点)
驚くことに、現在の受験料は同額です。受験申込方法は、どちらもそれぞれの試験公式サイトから行い、プロメトリック社またはピアソンVUEのウェブサイトで会場と日時を予約する流れとなります。
違い⑦:資格取得後のステップアップ
資格取得はゴールではなく、スタートです。その後のキャリアパスも見ておきましょう。
- ITパスポートからのステップアップ
- ITへの理解が深まったことで、次のステップとして基本情報技術者を目指すのが王道ルートです。
- 情報セキュリティに関心を持ったなら「情報セキュリティマネジメント試験」など、特定の分野に進む道もあります。
- 基本情報技術者からのステップアップ
- ワンランク上のエンジニアを目指し、応用情報技術者試験(スキルレベル3)に挑戦するのが一般的です。
- さらに、データベース、ネットワーク、セキュリティなどの専門分野を極めるための高度試験(スキルレベル4)へと道が続いています。
基本情報技術者は、ITエンジニアとしての長いキャリアパスの入り口に位置する重要な資格なのです。
キャリアプラン別|ITパスポートと基本情報技術者の最適な学習戦略

ここまで両資格の違いを解説してきました。ここからは、あなたのキャリアプランに合わせて、どのように学習を進めていくべきか、具体的な戦略と体験談を交えてご紹介します。
王道ルート!「ITパスポートをとってから基本情報技術者」を目指すメリット
ITの知識が全くない、あるいは文系出身でプログラミングに苦手意識がある、という方に最もおすすめなのが、まずITパスポートを取得し、その後に基本情報技術者に挑戦するというステップアップ方式です。
この王道ルートには、以下のようなメリットがあります。
- ITの全体像を無理なく学べる
いきなり基本情報技術者の分厚い参考書を開くと、専門用語の多さに圧倒されてしまうかもしれません。ITパスポートの学習を通じて、まずはITの地図を手に入れることができます。経営とITの関わりなど、広い視野を養える点も魅力です。 - 成功体験がモチベーションになる
ITパスポートという国家資格に合格することで、「やればできる」という自信がつきます。この成功体験が、より難易度の高い基本情報技術者試験に挑戦する上での大きなモチベーションとなります。 - 重複する分野の学習がスムーズになる
前述の通り、両試験の出題範囲には重複する部分が多くあります。ITパスポートで基礎を固めておけば、基本情報技術者の学習に入った際に「この用語は知っている」という状態からスタートできるため、学習効率が格段に上がります。
もしあなたがIT未経験で、どちらの試験を受けるか迷っているなら、まずはITパスポートから始めてみるのが最も確実で、挫折しにくい道と言えるでしょう。
【体験談】資格取得でキャリアはどう変わった?成功例と失敗例
ここでは、資格取得によってキャリアを切り拓いた人のリアルな声をご紹介します。
【成功例】営業職からDX推進部へキャリアチェンジしたAさん(29歳)
「以前は食品メーカーの営業をしていました。日々の業務でSFA(営業支援システム)を使っていましたが、正直ブラックボックス状態で…。会社がDX推進に力を入れ始めたのを機に、まずはITの共通言語を学ぼうとITパスポートに挑戦しました。勉強してみると、会社のシステムがどういう仕組みで動いているのか、なぜ情報セキュリティが重要なのかが分かり、ITニュースも理解できるようになりました。資格取得後、その知識を活かして業務改善提案をしたことが上司の目に留まり、なんと新設されたDX推進室への異動が叶ったんです。ITパスポートがなければ、今のキャリアはなかったと思います。」
【失敗例】いきなり基本情報に挑戦し挫折したBさん(24歳)
「プログラマーになりたくて、未経験からいきなり基本情報技術者の勉強を始めました。参考書のテクノロジ系の章、特にアルゴリズムの部分で完全に詰んでしまって…。2進数の計算など、数学的な考え方が苦手だったこともあり、3ヶ月ほどで挫折してしまいました。その後、友人から『まずITパスポートからやってみたら?』と勧められ、再挑戦。ITパスポートは経営の話などもあり、とっつきやすかったですね。無事合格して自信を取り戻し、改めて基本情報にチャレンジしたところ、以前はチンプンカンプンだった内容がスッと頭に入ってきて、半年後に合格できました。遠回りに見えて、私にとっては最適なルートでした。」
この体験談からわかるように、自分の現在地を見極め、適切なレベルの資格から挑戦することが、結果的に目標達成への近道となるのです。
文系・未経験者でも合格できる!効率的な勉強法のコツ
「文系出身だから…」「プログラミングなんてやったことないし…」と不安に思う必要はありません。どちらの資格も、正しい方法で学習すれば未経験からでも十分に合格可能です。
- 独学
- メリット:コストを最も抑えられる。自分のペースで学習できる。
- デメリット:モチベーション維持が難しい。不明点をすぐに質問できない。
- おすすめな人:自己管理が得意な人。参考書や学習サイトを比較検討できる人。
- 通信講座
- メリット:体系的にまとめられた教材で効率よく学べる。質問サポートがある場合が多い。
- デメリット:独学よりはコストがかかる。
- おすすめな人:独学では不安だが、スクールに通う時間はない人。
- スクール
- メリット:講師に直接質問できる。一緒に学ぶ仲間がいるため、モチベーションを維持しやすい。
- デメリット:コストが最も高い。通学時間が必要。
- おすすめな人:短期間で確実に合格したい人。学習スケジュールを管理してほしい人。
特に基本情報技術者の科目B対策では、実際に手を動かして簡単なプログラムを書いてみる(擬似言語の理解を深める)など、インプットとアウトプットの繰り返しが重要になります。自分に合った学習スタイルを見つけ、計画的に進めていきましょう。
まとめ|自分に最適なIT資格を選び、未来のキャリアを切り拓こう
今回は、ITパスポートと基本情報技術者試験の違いについて、様々な角度から詳しく解説してきました。最後に、この記事の要点を改めて確認しましょう。
- ITパスポートは、全社会人向けの「ITの共通言語」を学ぶ資格。ITリテラシーを証明し、あらゆるビジネスシーンで役立つ。
- 基本情報技術者は、ITエンジニア向けの「専門家への登竜門」となる資格。IT業界への就職・転職で強力な武器になる。
- 難易度は、合格率の数字以上に学習範囲の専門性を考慮すると、基本情報技術者の方が高い。
- IT未経験者は、まずITパスポートから挑戦し、基本情報技術者へとステップアップするのが挫折しにくい王道ルート。
どちらの資格が優れているか、という話ではありません。大切なのは、あなたのキャリアプランにとって、どちらが今必要なのかを見極めることです。
この記事を読んで、あなたが目指すべき道が少しでも明確になっていれば幸いです。
次のステップへ!まずは公式サイトでサンプル問題に挑戦しよう
「よし、どちらかを目指してみよう!」と思った今が、行動を起こす絶好のタイミングです。
しかし、いきなり分厚い参考書を買うのは少しハードルが高いかもしれません。そこで、次のアクションとして、まずは公式サイトで公開されている過去問題に挑戦してみることをおすすめします。
実際に問題を見てみることで、試験の雰囲気や問われる知識のレベルを肌で感じることができます。「これなら頑張れそう!」「まずはITパスポートからの方が良さそうだ」といった、具体的な判断材料になるはずです。
資格取得は、あなたの未来を拓くための自己投資です。今日この一歩を踏み出し、理想のキャリアを実現させましょう。